農家紹介

JAやさと有機栽培部会 黒澤 晋一さん
海運業から農業の世界へ。 虫たちと、お気に入りの景色に囲まれた暮らし。

JAやさと有機栽培部会 黒澤 晋一さん

海運業から農業の世界へ。 虫たちと、お気に入りの景色に囲まれた暮らし。

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店頭用POP配布

店舗様向けに、本ページで紹介している農家の店頭用POPを配布しています。
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アメリカ駐在を経て、震災を機に就農を決意

茨城県石岡市、旧八郷(やさと)地区に移住し、2013年から農業研修を開始、2015年に独立就農した黒澤 晋一(くろさわ しんいち)さん。就農する前は12年間、海運会社に勤めていました。2005年から3年間はアメリカに駐在。有機栽培の野菜が手に入りやすい環境や、農業大国の凄さを間近で体験しました。

2008年に帰国後、東日本大震災が発生。宮城県出身でもあり、当時、東京の練馬で家庭菜園を楽しんでいた黒澤さんにとって、職業としての農業を考え始めるきっかけになった出来事でした。「経験ゼロでも農業を始める方法はあるのか」と探していたときに出会ったのが、JAやさとの「ゆめファームやさと」で行われていた新規就農者向けの農業研修。夫婦で旧八郷地区の見学に行ったのは2012年の秋ごろのことでした。

筑波山の東、山と平野の起伏に富んだ八郷地区の景色が気に入った奥さんの後押しもあり、2013年、海運会社を辞めて移住。35歳からの夫婦二人三脚の農業研修が始まりました。

お気に入りの景色の中で、できるだけ自然に任せた栽培を続ける

家庭菜園時代から、農薬は使わない方針だった黒澤さん。自然な流れで有機農業を選びました。就農した際に借りた畑は空いている畑や遊休地だった畑なので、自宅から車で5分〜10分ほどでまわれる場所、7〜8箇所に点在しています。家の目の前にも畑があり、自家用の野菜もいくつか育てています。

「有機栽培の畑にはいろんな虫がいるのが楽しい」と話す黒澤さん。てんとう虫やカマキリなど、有機農家の味方になってくれる虫はもちろん、ただ畑にいるだけの虫、そして野菜の生育に悪影響を与える虫など、たくさんの生きものたちと共存しながら野菜を育てるのは、有機栽培の醍醐味でもあります。

とはいえ年によっては虫たちの仕業が手に負えなくなることも。昨年、8月に種を蒔いて11月に収穫を迎える予定だったにんじんの畑ではヨトウムシが大発生。一夜にして葉っぱが丸坊主になってしまい、さすがに途方に暮れました。

葉っぱが食べられても根っこのにんじんは食べられますが、葉っぱがなくなるとにんじんの形が悪くなってしまい、出荷基準を満たすことができません。いくつかは袋詰にして直売所で販売することができたものの、多くのにんじんを畑の養分に戻すことになってしまいました。こういうトラブルも楽しめるような気持ちがなければ、職業としての有機栽培は続けられないかもしれません。

「年々気候変動が極端になってきて、有機栽培への影響はかなり大きい」と黒澤さん。できるだけ自然にまかせた栽培を続けるためにも、リスクを分散するために色々な品種の栽培を試しています。2021年から育て始めたのは枝豆。以前はきゅうりをメインで育てていましたが、強風で擦れて出荷できなくなった経験から、台風が来る前に出荷できる早生の枝豆を育てることにしました。お客さまからも「久しぶりに美味しい枝豆をいただきました」というメッセージをいただくほど大好評です。

たくさんの「美味しい!」メッセージを糧に

こうしたお客さまからのメッセージは、生協から出荷されている野菜を食べたお客さまから届いたもの。野菜の中に入った生産者情報のカードの裏に直筆でメッセージを書くと、生産者に届けられるという仕組みになっています。独立就農から丸10年。黒澤さんはいただいたメッセージを大切に保管しています。

生協だけでなく、都内のスーパーに出荷している野菜についても、お店の方から「すぐに売り切れましたよ!」という連絡をいただいたり、「売り切れないうちに午前中に買われて、仕事が終わる夕方まで取り置きしていくお客さまもいらっしゃいますよ!」という嬉しい連絡をもらうことも。

こうしたお客さまの声に支えられ、もっと美味しい野菜が育つよう、栽培にも工夫を凝らしています。1つ目の工夫はボカシ。米ぬかを地元の精米所から譲っていただいたり、同じ地域で大豆を育てている農家さんからくず大豆を譲っていただいて、良質なボカシを作っています。2つ目の工夫は、無理をしないつくり方。限られた面積で収量が確保できるよう、ついつい密植をさせたくなってしまいますが、我慢して広々、のびのびと作ることで、元気な野菜が育つように工夫しています。

毎年新規就農者が入り、地域の農家の2/3が移住者である旧八郷地区で、ベテランとも呼べる存在になった黒澤さん。新しく入ってきた新規就農を志す家族の研修を担当する機会も多くなってきました。自分で作りながら教えることで、自分の中でも整理できるので良い機会になっているそう。

「活気ある八郷地区での有機栽培を盛り上げていきたい」と話す黒澤さんの眼差しは、畑の野菜と虫たちを見守る優しさに満ちていました。  

生産者情報

JAやさと有機栽培部会 黒澤 晋一さん

JAやさと有機栽培部会
部会長:岩瀬 直孝
住所:茨城県石岡市柿岡3236-6
HP:https://www.jayasato-yuukibukai.com/index.html
主な栽培品目:小松菜、玉ねぎ、きゅうり、枝豆、大根、にんじん、長ねぎなど