店頭用POP配布
店舗様向けに、本ページで紹介している農家の店頭用POPを配布しています。
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現代の食卓を豊かに彩るオーガニック野菜の背景には、環境保全や持続可能性、そして食の安心安全への想いがあります。それらのほとんどを実現できる「草農法」を開発した有
限会社 盛田アグリカルチャーリサーチセンター(MoARC)の農業の魅力や未来の展望についてご紹介します。
取材に応じてくれたのは、生産部長の橋澤さん。創業者の西村さんが農業の世界に足を踏み入れたきっかけから語っていただきました。
実は西村さん、農業とは無縁の意外なキャリアから始まっていたのです。最初に就職したのは外資系穀物商社。穀物メジャーで世界の食料情勢に触れるなどバリバリと働いていた中で、世界の農業マーケティングや市場原理主義への疑問が膨らんでいき、それらがきっかけの一つとなって農業に転身したのだそうです。
1993 年に 40 歳で金融業界を離れた西村さんは、千葉県での研修や自然農法の研究を重ね、2 年後に草農法を確立。この農法が生み出す持続可能な農業モデルが、現在の法人設立の礎となっています。
先述の「草堆肥」とは、地域で発生する草を堆肥化し、自然由来の肥料として活用する技
術のこと。農薬や化学肥料に頼らずにさまざまな作物を育てられるのが特徴です。
初期には病害虫の発生や土壌の未熟さによる困難もありましたが、「歴史が先生だ」との信念のもと、西村さんとチームは改良を重ねました。
「草農法の効果を試すべく、パラオ共和国での実験栽培にも取り組みました」と橋澤さん。
同社の設立にも関わった盛田氏の縁によって、パラオでも農業をすることになったのです。
同国は赤道近くにあるため高温多湿で紫外線が強い過酷な環境だったようですが、その成果は大統領も驚くほどで、この成功体験が日本国内の農業展開に繋がりました。
また、草堆肥は地元の環境資源(草など)を活かしながら有効利用できる点も証明されました。
パラオでの経験を自信に変えた西村さんは帰国し、その後に日本の若者に農法を伝えるため「MoARC」を始めたのです。
ちなみに国内では、川辺の草を刈り取り堆肥化することで河川管理と農業の両立を実現しているとのこと。
このような「地域循環型」の取り組みは、他地域にも展開できる可能性を秘めています。
茨城の農園では、ベビーリーフや赤大根、紫大根など、多種多様な作物を栽培しています。
特に草堆肥農法は葉物野菜との相性が良く、葉が厚くしっかり育つために味わい深く、野菜本来の鮮度が長く保たれるのが特徴です。
「お客様からは『味が濃くて美味しい』と喜ばれる一方、野菜本来の苦味や辛味に驚かれることもあります」と笑顔で語る橋澤さん。
地域や環境に応じた農業展開を進めるため、長野の高冷地では色鮮やかなベビーリーフを栽培し、気候特性を活かした品質向上を図っています。「長野の農園は夏場でも気温が安定しており、葉物野菜の鮮やかな発色が保たれることが強みですね」と橋澤さん。これにより、夏場の需要に応えるだけでなく、消費者に視覚的な満足感を与える野菜作りが可能になっています。
草農法は環境負荷が少ないため、SDGs やカーボンニュートラルに貢献できる農法とされています。ただし、農業全般に共通する課題(例えば収穫量)がないわけではありません。
橋澤さんは「私たちの野菜作りは短期的な利益ではなく、10 年 20 年という長期的な視点で進めています」と強調しています。具体的には、草堆肥を使った農業仲間を増やし、この農法の持続可能性を示すことで、新規参入者を支援する活動も進めているのです。
さらに、現在は家庭菜園向けの草堆肥商品を販売する試みも行っています。「個人のお客様から『自宅で作る野菜が美味しくなった』との声をいただくことが多く、草堆肥の普及に手応えを感じています」と橋澤さん。この取り組みは、ちょっとした手間で収穫の楽しさと野菜のおいしさを味わってもらいながら、草堆肥のファンも増やすといった期待が込められています。
直接農業を体験する機会を提供することもモアークの大切な活動の一つです。レストランスタッフや小学生を対象に草取りや収穫を体験してもらうことで、「食卓に並ぶ野菜がどの
ように作られるのか」を知ってもらいます。「体験を通じて野菜の価値を理解し、自信を持ってメニューの提案ができる」といった声も寄せられているとのこと。
さらに、野菜を購入したお客様から寄せられる感想や手紙は、農家さんにとって大きな励み。「味の濃さを褒めていただくことが多いので、とても自信になりますね」と橋澤さんは語ります。また、取引先のバイヤーやシェフからは、鮮度の良さや安定供給に対する評価も高いようで、特に棚持ちの良さは流通業界や小売店からの支持を受け、販路の拡大に貢献しています。
また、農園を訪れるシェフたちと直接会話をすることで、新たな気づきが生まれることも少なくありません。例えば、「この野菜の形状をもう少し変えられないか」「こういった種
類も作れるか」といった要望から商品開発や改良のヒントを得ています。
今後の展望としては、草堆肥農法を広めるためのフランチャイズ展開や個人向け草堆肥の普及が検討されています。また、夏に強い長野農園に続き、冬に強い農園の設立を目指し
て候補地探しも進行中。これにより、年間を通じた安定供給を実現したいとのこと。
「持続可能な農業が生業として成り立つことを示し続けるのが私たちの使命です」と語る橋澤さん。その言葉には、草農法への確信と、次世代へ繋げる農業の可能性への希望が感
じられました。茨城から広がる草農法が、食卓や環境、そして未来にどのような変化をもたらすのか。今後の活動から目が離せません。