農家紹介

農業生産法人 オーガニックファームつくばの風有限会社
「包丁の入り方が全然違う!」恵まれた大地で育つ、シェフも思わず笑顔になるにんじん。

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「包丁の入り方が全然違う!」恵まれた大地で育つ、シェフも思わず笑顔になるにんじん。

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店頭用POP配布

店舗様向けに、本ページで紹介している農家の店頭用POPを配布しています。
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畑の土から呼ばれている気がして、有機農業の道へ

「有機栽培をはじめたきっかけってよく聞かれるんですけど、いつも悩むんですよね」と、優しい口調で語りはじめる、つくばの風の山本稔(やまもと みのる)社長。米どころの新潟県の兼業農家に生まれ、小さい頃から田植えや稲刈りの手伝いをして育ちました。大学入学を機に上京し、都内に居住し仕事もしていましたが、「居心地の良い場所が都会生活には見つからなかった」といいます。

 

そんな折、友人から「有機野菜の宅配事業を一緒にやらないか?」と誘いがあり、茨城へ移住。取り扱う有機野菜の生産者さんにお会いする機会も多く、みなさんが生き生きと働く姿を見て、良い生き方をしているなぁ、と思うようになりました。そして「人間を幸せにするのは、有機農業、有機野菜、良い材料を使った加工品だ」という考えに至り、「人間の食べ物を作る仕事をしよう」と心に決めたのが、ちょうど30歳の頃。

 

「2階の宅配事業の事務所から見える畑の土に、“こっちに降りてこい”と、呼ばれた気がしたんですよ」と山本社長。1997年頃から徐々に本業の宅配業と並行して畑仕事を始め、2000年頃には事業を有機農業へと本格移行。2001年の有機JAS認証の発足を待つようにして、有機野菜の出荷を開始しました。

もっとお客様に喜んでもらいたい。手のかかる春夏にんじんにも挑戦

現在の耕作面積は7.5ヘクタール、およそ東京ドーム1.6個分。もちろん全てが有機栽培。また、「自然を受け入れて、ありのままで育てたい」という想いから、全て露地栽培で育てています。季節に応じて、主にレタス、モロヘイヤ、つるむらさき、ちぢみほうれん草などを栽培していますが、特に力を入れているのはにんじんの栽培です。

 

露地のにんじんは初秋から種まきを行い、冬の初めから収穫する秋冬にんじんが一般的ですが、つくばの風では春に種まきし、夏に収穫を迎える春夏にんじんの栽培も行っています。春夏にんじんの栽培は秋冬にんじんに比べ、害虫や高温障害などに特に気をつける必要があるので手がかかりますが、できるだけ収穫したてのにんじんを周年で供給したいという想いで取り組んでいます。

 

「芽が出て、育って、収穫できるようになって、お客さまの手に届いて、美味しいね、立派だね、と言ってもらえるのが最高の喜びですね」と山本社長。以前、畑近くのレストランへ出荷していた時、シェフが「このにんじんは包丁の入り方が全然違う!切った時の瑞々しさ、きめ細やかさが素晴らしい」と喜んでくれたことがありました。よく買いに来てくれる近所のおばあちゃんは、「このにんじんは柔らかいのに、煮崩れしないんだよ」と嬉しそうに話してくれました。最近はにんじん以外のつるむらさきやモロヘイヤも人気。モロヘイヤは収穫時期が難しく、課題が残ったので、今年の栽培時期に再度挑戦するつもりだそうです。

 

山本社長は「お客さまに喜んでもらうのは一番大事なことですが、赤字を出したら経営的に持続しません。“百姓は毎年毎年が一年生”という言葉がありますが、自然を相手にしている以上、マニュアル通りの画一的な仕事ではなく、想定外のことが起こるのがむしろ、農業の醍醐味だと言えるかもしれません」とおっしゃいます。

半農半Xも大賛成。少しずつ、自分でも野菜を育ててみてほしい

茨城に移り住み、有機農業を始めて25年の山本社長ですが、意外にも「茨城は出ていくつもりだった」といいます。住み続けるきっかけになったのが、長塚節(ながつか たかし)の『土』という小説を読んだことでした。長塚は茨城県の常総市で生涯を過ごした農民文学者ですが、小説で描かれるどこか荒っぽい、泥臭い風情のある茨城という土地が、少しわかった気がして、愛着が湧いたといいます。

 

そして、「実はつくばは茨城県の中でも、いろんなことに恵まれているんですよ」と山本社長。恵まれていることの1つが畑の場所と土壌。故郷の新潟県だと畑は山間にあるのが普通で、土にも石などが混ざっていることが多いのですが、つくば市はご存知のとおり関東平野に位置し、肥沃な関東ローム層の土が豊富にある、まさに畑作にぴったりの土地です。

 

もう1つのポイントは水。近くの霞ヶ浦揚水のおかげで豊富な農業用水が用意できるので、春夏にんじんの発芽に欠かせない灌水を行うことができています。

そして売り先。首都圏へのアクセスも良く、新鮮な野菜を供給することができます。

 

「少しの面積でもいいから、みなさんに野菜を育ててみてほしいです。きっと幸せを感じると思うんですよ」と山本社長。もちろん、野菜づくりは楽な仕事ではありませんし、気候変動も激しくなっているため、今後さらなる苦労が予想されます。それでも、山本社長は「こんなに人から、ありがとうと言われる商売って、あまりないんじゃないかな」と続けます。

 

「専業農家はハードルが高いけど、今は「半農半X」という言葉もあるように、兼業でも始められる時代です。ワークスタイルの変化に伴い、田舎に移り住んだ人も多いと聞きます。今までの職業で地固めをしつつ、少しでも農業に興味を持って、取り組んでくれる人が増えたら嬉しいですね」

 

野菜を育てる喜びを感じながら、今日も生き生きと働く、山本社長とつくばの風のみなさん。25年前に山本社長を呼んだ“畑の土”はきっと、この風景を待ち望んでいたのかもしれません。

生産者情報

農業生産法人 オーガニックファームつくばの風有限会社

代表者:取締役社長 山本稔
住所:茨城県つくば市手子生997-1
HP:http://www.tsukubanokaze.net/index.html
主な栽培品目:にんじん、レタス、ちぢみほうれん草、つるむらさき、モロヘイヤなど